このページでは「1917 命をかけた伝令」を見た感想をお伝えしたいと思います。
多少、ネタバレ気味の部分もありますが、ご容赦ください。
新鮮な映画体験をさせてくれる作品
「1917 命をかけた伝令」は、アクションもあり、スペクタクルもあり、泣かせる要素もあり、映画としては大変面白かったです。
映画を見てまず感じたのは、ワンカット(風)撮影による没入感がすごいということ。
主人公の後を追い続ける視点が本編中ずっと続くので、いつの間にか見ている方も主人公と一緒に戦場を移動しているような感覚が得られます。
結果として、自然と主人公に感情移入してしまいますから、主人公の驚き、怒り、悲しみなどに強く共感してしまうのです。
逆に本作がオーソドックスな撮影方法による作品だったら、そこまで感情移入することはないかもしれません。
本作の最大の特徴となっている全編を通したワンカット撮影ですが、これはやはりハリウッド映画でなければ実現できない試みという感じがしました。
本作は戦争映画、それも100年以上も前の時代の話です。
全編ワンカットということは、主人公の移動に合わせて塹壕や破壊された街などのセットを作っていかなければなりません。
そんな製作費に余裕がなければ実現できない試みを目にすることができるというのは、映画ファンにとって幸せなことだと感じます。
戦争映画ファンにとってはかなり不満点も
このように「1917 命をかけた伝令」は、オリジナリティあふれる映像で新鮮な体験をさせてくれる映画なのですが、不満も感じました。
それは、物事があまりにもうまくいきすぎてしまう、ということ。
言い方を変えれば、あまりにもフィクションっぽさが感じられてしまう、ということになるでしょうか。
実際に行われた戦争って計画通りにいかないもので、そこでドラマが生まれることが多いと思うのです。
もちろん、本作はドキュメンタリーではなくフィクションなので、多少のご都合主義はあっていいのですが、それにしても主人公・スコフィールドの幸運ぶりが多すぎるように感じました。
まず、序盤のドイツ軍陣地での爆発でスコフィールドは命を落としてもおかしくありませんが、目に埃が入ったくらいでケガをすることもありません。
そして、中盤の川向こうからスナイパーに攻撃されるシーン。
スタンリー・キューブリックの「フルメタル・ジャケット」をご覧になった方はおわかりかと思いますが、物陰に隠れたスナイパーの攻撃から逃れるのはかなり困難なように感じます。
けれど、スコフィールドはなんなくかわしたあげく、スナイパーを返り討ちにまでしてしまいます。
まあ、スコフィールドが凄腕の兵士だった、という解釈もあるでしょうが…。
次に破壊されたエクスートの街でのシーン。
お互いにはっきりと姿を見ることができる距離でスコフィールドはドイツ兵から小銃で撃たれますが、ドイツ兵の撃った弾はスコフィールドに当たりません。
まあ、これもドイツ兵が相当射撃が下手だった、あるいは眠かった、酔っ払っていた、という解釈もできなくもないですが。
その後、スコフィールドはドイツ兵に追われて川に落ちますが、幸運にも溺れることなく、また幸運にも味方陣地の近くで岸に上がることができます。
調べてみると本作はワンカット撮影のために、撮影中に脚本を変更した部分があったそうです。
全編ワンカット(風)撮影という本作のセールスポイントを徹底させるため仕方なく、という理由も恐らくあるのではないかと思われますが、それにしてももう少しやりようはなかったのかな、とも感じました。
本作は、サム・メンデス監督が祖父から聞いた話が基になっているそうなので、恐らく似たような出来事はあったのでしょう。
ただ、あまりにも映画としての見栄えのためにあちこちをふくらませすぎてしまったのではないかと推測されます。
「戦争のはらわた」、「フルメタル・ジャケット」、「ブラックホーク・ダウン」といった名作といわれる戦争映画に共通しているのは、見終わった後の「やり切れなさ」だと個人的に思います。
元々普通の人である兵士が、さまざまな要因によって個人的には何の恨みもない敵兵の命を奪うことになる狂気が感じられるのが、戦争映画の醍醐味だと思うのです。
残念ながら、「1917 命をかけた伝令」には「やり切れなさ」も「狂気」もあまり感じられません。
確かに、こういう名もなき兵士の英雄的行動も戦争の一面ですが、本質ではありません。
まとめ
「1917 命をかけた伝令」の感想をお伝えしました。
「1917 命をかけた伝令」は映画としての新鮮な驚きを感じさせてくれますが、こと戦争映画というジャンルで考えると戦争の理不尽さというものについての描写が少ないように感じました。
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